当院では、予防を重要視しています。なぜなら、歯は治療すると、決してもとの状態には戻らないからです。特に、歯が割れてしまったり、歯周病が悪化するなどして、歯が抜けてしまうと、もう二度と元に戻すことはできません。近年では、口腔環境と認知症や誤嚥性肺炎の関連が明らかになり、お口のメンテナンスや定期検診によって、口腔内を健康に保つことにより、健康寿命が伸びると言われています。

メンテナンスでは、効果的な歯磨きの方法をご紹介し、歯石取りなどのクリーニングを行います。虫歯のチェックも同時に行うため、痛みが出る前に発見し、回数や時間のかからない処置で済ませられることもあります。治療が終わった部分についても、定期的にメンテナンスを行うことで、より長期間にわたって良い状態を維持することができます。

PMTCとはプロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニングの略で、歯科医師や歯科衛生士などの専門家による、専用の器具を使った歯のクリーニングです。歯の表面に付着した、目には見えない細菌の塊である「バイオフィルム」を着色と一緒に除去し、歯の表面を磨きます。歯の表面をツルツルに仕上げ、特殊な薬でコーティングすることで、その後の着色やバイオフィルムが付着しにくくなるという利点があります。また、歯石取りと違い、痛みを感じにくいのも特徴です。普段の歯磨きでは落としきれない細かな汚れも徹底的に取ることができるため、虫歯や歯周病、口臭の予防に効果を発揮します。

フッ素塗布

虫歯の原因は、虫歯菌が出す「酸」です。酸に冒されると歯の成分は黒く変色し、溶けてしまいます。これが虫歯です。フッ素は歯の表面に触れると、エナメル質という歯の表面の組織に吸収されます。フッ素を取り込んだエナメル質は、通常のエナメル質よりも抗酸力が高まり、酸に対して強くなります。

このような理由で、フッ素を歯の表面に塗ったり、フッ素が含まれた水でうがいをすることで虫歯を効果的に予防することができます。フッ素入りの歯磨き粉はもちろんおすすめですが、歯科医院で行うフッ素塗布は、市販のフッ素入り歯磨き粉よりも高濃度なため、より高い効果が期待できます。

シーラント

シーラントは、奥歯の噛み合わせ面の虫歯を防ぐ予防法です。生えてきたばかりの子どもの歯の噛み合わせの面には、複雑な溝が複数あり、汚れが溜まりやすくなっています。ここに専用のプラスチックをあらかじめ詰めておくことで、汚れの停滞や虫歯菌の繁殖を防ぎます。また、この詰め物には、フッ素が含まれており、少しずつ放出されることで、二重に虫歯を防ぐことができます。

詰め物は歯にくっつく性質があるため、歯を削ったりする必要はありません。ただし、シーラントは予防ですので、絶対に虫歯にならないという訳ではありません。大切なのは、保護者の方の仕上げ磨きと定期検診です。また、シーラントは既に虫歯になっている歯には処置することができません。